これは’44年1月に開演したミュージカル【Mexican Hayride】にコール・ポーターが書いた曲で、そこではウィルバー・エヴァンズ Wilber Evans が歌った。このミュージカルは〝分速一マイル〞のお喋りでならしたボビー・クラーク Bobby Clark と、ジューン・ハヴォックらが主演し、装飾に贅をつくし足の長いショウ・ガールを多く配し、戦時中にしてはかなりの制作費をつぎこんだ豪華なショウで、481回と成功した。2,212回もつづいた’43年3月開演の【Oklahoma】は別格だが、戦時中のミュージカルは【One Touch of Venus】（’43年10月開演、567回）、【Carmen Jones】 （’43年’12月開演、502回）、【Follow the Girls】（’44年4月開演、882回）、【Song of Norway】（’44年8月開演、860回）、【Bloomer Girl】（’44年10月開演、654回）、【On the Town】（’44年12月開演、463回）、【Up in Central Park】（’45年1月開演、504回）、【Carousel】（’45年4月開演、890回）など、どれも大きく成功していて、’30年代とは対照的だ。戦時中多くの芸能活動が停止同然に追いこまれた日本と違って、反対にブロードウェイ・ミュージカルが軍需景気から活況を呈してくるあたり、彼我の国力の差を反映しているようだ…

── 本文より