Episode #001 世界最高のジャズ・バンド 〝世界最高のジャズ・バンド〞という肩書はいつもトラブルのもと。オクラホマ・シティのあるクラブで一人の女性が「あなたたちホントに世界最高のバンドなの?」と訊いたから、バド・フリーマン Bud Freeman(テナー・サックス奏者)は「そうですよ」と答えた。
Episode #002 「うん、どうやらこのバンドが好きになってきたな」 フレッチャー・ヘンダーソンはルイ・アームストロングに彼のバンドに入らないかと誘ったが、その最初のリハーサルのときのアームストロングについて彼はこう語る。
Episode #003 二つの間違い ディック・ジョンソン Dick Johnson がアーティ・ショーに彼の新しいバンドの音楽監督として選ばれたとき、ディックは西海岸の楽器屋に電話して新しい譜面台を注文した。電話を受けた若い男はとても親切で、色や重さや字体のデザインなどを説明してくれた。ディックは彼に譜面台の前面に〝The Artie Shaw Orchestra〞と入れてくれるように注文した。
Episode #004 ジミー・ロウルズがジョージ・ムラツにつけたあだ名 ピアニストのジミー・ロウルズ Jimmy Rowles はベースのジョージ・ムラツ George Mraz にあだ名をつけてやった。このとても才能ゆたかなベース奏者、ジョージはチェコスロヴァキア生れだった。ジミーは彼のベースの演奏を〝バード baaad!〞(バンド用語、ミュージシャンの隠語で〈うまい〉という意味で、〈bad 悪い、へた〉の意味をひっくり返している)と評していた。
Episode #005 ジェリーはポケットから大きなピストルを出して キッド・オリィ Edward ‘Kid’ Ory が’23年のオーケイ OKeh・レイベルでレコーディングしたときのジェリー・ロウル・モートン Jelly ‘Roll’ Morton について次のように語る。
Episode #006 「じゃその混じってるという奴がだれか言ってみてくれ」 トラミー・ヤング Trummy Young が、ウィリィ・ザ・ライオン・スミス Willie ‘the Lion’ Smith がリード・アルトを担当していたときのハリー・ジェイムズ・バンドについて語る。
Episode #007 ドロスィー・フィールズのとんだ劇場デビュー エリントン楽団と歌手とのリハーサルもすませ、初演の夜は客席に父のルー、母、最初の夫ジョウ、兄のハーバートも呼んで迎えた。父母はドロスィがショウ・ピズィネスに入るのに猛反対で、彼女のオ能を鑑定してもらう意味もあって、父の親しい友人でもあるウォルター・ウィンチェルに同席してもらっていた。
Episode #008 「望ましくない人物が越してくるのは私も御免だから」 ナット・キング・コールがロス・アンジェルス郊外の白人居住地区に住宅を購入したときだったが、そこの住宅所有者の一部が望ましくない人物が近隣に越してくることに反対する運動を起こし、請願書をまわして署名を集め始めた。
Episode #009 いたずらっ子の首謀者ファン・ティゾル みんなのなかでも一番悪いいたずら屋はファン・ティゾルだった。たまにしか彼に会わない人は信じられなかったろうね。彼はいつも下らないことには無関心そうな超然としたとこがあったけど、じつは僕らいたずらっ子の首謀者だったのさ。
Episode #010 マイルズ・デイヴィスが《マイアミ・ヴァイス》出演を振り返って 1989年に私(Miles Davis)はもう一つ楽しい経験をしたが、それはテレビの《マイアミ・ヴァイス》にポン引きとヤクの売人として出演したことだ。その役をやったとき、それを演じてどう感じたかと誰かに尋ねられたが、私は「黒人なら年がら年中演技しているのさ」と答えたよ。本当さ。この国じゃ、黒人なら単に生きていくために毎日あれこれ演技してなくちゃならないんだ。