You Turned the Tables on Me を更新しました。

You Turned the Tables on Me を更新しました。このturn the tables on me は曲者です。これもずっと誤訳されてきたフレイズですね。本当に少しずつ、一歩一歩正しい訳に近づいていく、そんな感じです。以下は更新版の補遺の冒頭部分です。どうぞ読んでください。

 

turn the tables on me は状況を〈ひっくり返す、逆転する〉の意味になる。これはどの辞典を引いてもはっきりしていて誤解の余地はない。文字通り〈テイブルをひっくり返す〉ととってもいいかと思う。中華料理などで回転するテイブルがあるが、あれを廻すととると、こういう意味はどうしても浮き出てこない。turn には〈廻す、回転する、させる〉の意もあるが、〈裏返しにする、ひっくり返す〉の意もある。従って、私の目の前で、あるいは私に向かって、料理かなにかが満載した〈テイブルをひっくり返す、裏返しにする〉という意味に(もちろん比喩的だが)とることも、間違いではないかもしれない。つまりこの曲のなかでは、最初は彼が私に夢中で、私は女王様のように崇め奉られてのぼせ上がり、どうも彼をぞんざいに扱ったようで、それが今は立場が逆転してしまい、こうなってみるとこういう扱いを受けても止むを得ない、当然の報いだと、後悔しているような歌なのである。この turn the tables on は負けている試合をひっくり返すというような意味で盛んに使われるので、〈逆転する、ひっくり返す〉と意訳せずにほぼ辞義どおりに訳した。
 アニタ・オウデイの歌が面白く、参考になる。ゆったりとしたテンポで、合計2コーラス半歌っている。だがそのヴァーヴ MV2501 の日本盤の解説には曲名として「私に頼むわ」という謎のような日本語が充てられていて、なまじ英語が判って歌詞の意味が少しでも理解できる人は、困ったことに、頭を抱えこむことだろう。この曲の形式はABA’C 32小節だが、案外細かく変化していてその歌い方は難しい。ビリー・ホリデイとエラ・フィツジェラルドのものについては触れたが、アニタ・オウデイも遅く、テンポは絶対に速くできない。解釈も発音も抑揚も思いのほか難しい。繰りかえすが日本人にとって一番難しい種類の歌かもしれない。
 さて意味の分からない人がつけたのだろう〈私に頼むわ〉という曲名はひど過ぎるが、ではこの曲の名を日本語にするにはどうすればいいだろう? 難しい注文だ。エノケンの〈月光価千金〉などという面白い曲名もあったから私なら〈形成一挙逆転〉とでもしたいが、この曲のファンには気に入ってもらえないかもしれない。