Episode #011 やっとその日がやってきた オスカー・ビーターソンはコンサートのまえに密かにハーブ・エリスのギターの弦を弛めておいて、演奏の直前まで彼を会話に引きずり込むということをよくやった。あるいは逆に弦には触っていないのに弦を弛めたようなふりをして、次の曲をいつもより高いキーで弾いて、ハーブに楽器の弦がくるっていると思わせたりもした。
Episode #012 「チャーリィ・パーカーさんの電話番号を…」 チャーリィ・パーカーの死後35年が経過したが、クリント・イーストウッドが監督した映画『Bird バード』の製作にあたってその宣伝期間中のこと、その映画にも登場するトランペッターのレッド・ロドニィ Red Rodney がネブラスカのある新聞社の記者から電話を受けた。
Episode #013 僕はジャズについて少しばかり話したいんだ! アート・ブレイキーが市外の仕事で車を走らせているときだったが、ある村にさしかかると、葬式の行列のために進路が完全に渋滞して動けなくなってしまった。この葬儀が終わるまでは墓地の周辺を通り抜けることはできなかったので、彼は車を出て死者に対する追悼の辞に耳を傾けた。
Episode #014 きみのバンドに僕も入れてくれないかい Episode #014 きみのバンドに僕も入れてくれないかい トミー・ドースィのお気に入りのドラマーは、スーパー・ソロイストのバディ・リッチだった。リッチはクラブ〝ヒッコリィ・ハウス Hickory house〞でジ […]
Episode #015 トミー・ドースィが止めに入ってくれたが… Episode #015 トミー・ドースィが止めに入ってくれたが… トミー・ドースィは時間厳守の規則をつくっていて、もし遅刻した場合はだれにでも罰金を課した。であるときジョウ・ブシュキンもそれを払う羽目に陥った。 ── […]
Episode #016 少なくともワン・ブロックぐらい運転したってことは信じてもらえるかな? アート・テイタム Art Tatum は同時代の目の見えるどんなミュージシャンよりも完成された音楽家だったから、多くの盲目のミュージシャンにとって励みとなった。
Episode #017 ハリー・ルビーが書いて後悔した歌 あるときテレビ番組でこう尋ねられたんだ。「ハリー、あなたが書いた歌のなかで書いたのを後悔しているような歌ってありますか?」とね。それで「ああ、一曲だけ書いたのを後悔してるのがあるね。それは[Three Little Words]さ」と僕は答えたんだ。
Episode #018 ジョージは鉄砲のように飛び出した アート・テイタムに大きな影響を受けたピアニストにもう一人ジョージ・シアリングがいる。ある晩〝バードランド〞を仕事を終えて出るときに、ジョージの友達がみんなで、彼をちょっとしたジョークで引っかけた。
Episode #019 旅費は自分で払え ヴィヴラフォン奏者のテリー・ギフズ Terry Gibbs がまだ若がったころ、トミー・ドースィのオーケストラに加入したとき、彼はとても嬉しがった。飛行機を信じていない母のために、彼は汽車でカリフォルニアまで行き、同バンドに合流した。
Episode #020 「あ、そうか。で、いくらだね?」 ベニー・グッドマンは天オ肌の音楽家の典型のような人だった。演奏能力の劣る人に対しては冷酷で容赦ない人だったが、優秀なミュージシャンに対しては温かい讃辞で迎え、黒人に対する差別や偏見とも縁のない人だった。